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【書評】「野心のすすめ」の感想

   

野心のすすめ (講談社現代新書)

こんにちは、くるみです。

今日は、林真理子「野心のすすめ」の感想をお伝えしていきます。

林真理子さんについては、私は文庫や雑誌の連載を一部読んだことがある程度であまりよく知りませんでした。

ですがこの本を読んで、林真理子さんがどのような人でどんな人生を送ってこられたのかはよくわかりました。なぜなら、これは人に野心を持つことをすすめながらご自分の人生を語る自叙伝だったからです。

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「野心のすすめ」の読後に残る違和感

 

さて、せっかくここまで読んで下さったのに、「上から目線でクドクド小言を言われたり、自慢話ばっかりだし、さんざんな目にあったよなぁ」と残念に思われている方々がいらっしゃるような気も…

 引用:林真理子「野心のすすめ」講談社、2013、182頁

と自ら本の最後でおっしゃっていますが、読後に本当にこのような気持ちになることは否定できません(笑)。

野心を持つべき理由を説明しているというより、ご自分のサクセスストーリーを手本として「野心を持って努力すればこんなに成功できますよ」と言っている印象です。

「うん、正にその通り!野心を持たなきゃ!」という肯定的な感想を持つ一方、「いや、そうじゃないだろう」という否定的な気持ちにもなり、その結果「なんだかしっくりこないな~」という違和感が残りました。

「野心のすすめ」における「野心」とは

世間で「野心」といえば、腹黒かったり身の程知らずであつかましいイメージが先行していますよね。「野心家」となると、もうほとんど悪人扱いです。
 実際に、辞書で「野心」を引いてみました。
(中略)
三番目が「大きな飛躍を望んで、新しいことに大胆に取り組もうとする気持ち」です。有名なクラーク博士の言葉「少年よ、大志を抱け」<Boys, be ambitious.>の「大志」の意味。私が本書で提唱したい「野心」も同じく、「もっと価値ある人間になりたい」と願う、とても健全で真っ当な心のことです。

 引用:同上 4頁

なるほど、クラーク博士ねえ。下剋上みたいに這い上がって成り上がってやろうという「野心」なら、凡人にはなかなか持つのは難しいけれど、そういう「野心」なら誰でも持つべきかもね、と思えます。

 いま、「低め安定」の人々がいくらなんでも多すぎるのではないでしょうか。
 (中略)
「まあ、なんとかなるさ」と、自分の将来さえ真剣に考えようとしない人々ばかりが暮らす国の未来はいったいどうなるのか―。

 引用:同上 9頁

昔と比べて、特に若い人に「野心」を持たない人が多いことを憂慮し、「野心を持て」と忠告しているのです。

これについては私も同感です。ゆとり世代とか悟り世代とか言われている若者を見ると本当に嘆かわしい気持ちになってきますし、社会に出たばっかりで〝そこそこ″〝ほどほど″ でいいやと思って働いている人には「若い内はがつがつ働いてもっと稼げよ!」と言いたくなります。

本に書かれていることに共感し、「野心」を持ったら人生どのように変わるのだろう、とワクワクしながら読み進めていくと…

んんん?? なんだかおかしな方向に行っているぞ?

と第2章あたりから思い始めるのです。

贅沢やお金が幸せ?

 一生エコノミーの人は絶対にファーストクラスの座席を目にすることはありませんが、一度でもビジネスに乗るとファーストの世界をいやがおうでも目にしてしまうのです。
 人の生き方も同様です。ずっと三流のままであれば、一流の世界を覗くことさえできない。

 引用:同上 54頁

何回読んでも、何を言いたいのかさっぱりわからないのは、私だけなのでしょうか。

エコノミー階級の奴らはファーストクラスに憧れて当たり前。うらやましく思わない人がいるなら、それはファーストクラスの世界を知らないから。知ったら誰もが「私もファーストクラスに乗りたい!」と思うはず。と、そんな風に聞こえます。

「もっと価値のある人間になりたいと願う健全で真っ当な心」はどこへ行ったんでしょうか。クラーク博士の「大志」の向かう先がファーストクラスなんでしょうか? そして次に出てくるのは、エルメスのバーキンの話。

何というか、こういう贅沢志向って、バブル時の考え方だと思うんです。まるでファーストクラスやバーキンに憧れなければならないと強制されているような感覚。努力すれば報われる。みんなお金持ちになれる。全員が一流を目指さし、高級車に乗ってブランド品を持っていれば幸せだった時代。

誰もが知っている通り、今はこういう時代ではないですよね。お金が余るほどあって、余って余って仕方ないとかいう状態なら、ファーストクラスにも乗りバーキンも買うかもしれませんが、ファーストクラスに乗るために頑張るぞ、バーキンを買うために頑張るぞという人が、今どれくらいいるんでしょう。

閉塞感でいっぱいの今の世の中。がんばれば報われるかと言えばそうでもないし、モノでは幸せにはなれないということにみんな気づいてしまった。だからこそ「断捨離」が流行り、みんなモノを手放そうとしています。モノの豊かさや贅沢よりもっと違うものを求めている気がするんですよね。

それなのに、ほれほれファーストクラスだバーキンだと見せびらかされても、「ああバブルが抜けないんだな」と半ばイタイ目で見るだけです。

もちろん、ファーストクラスに乗ってバーキンを持っている人は立派だし、すごいと思います。だけどそればかりが幸せではない。この本では、それがなければ幸せとは言えないと言われているようで、息が詰まってしまいます。

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野心に終わりはあるのか

 野心には飢餓感という副作用がありますから、野心などを持たず、ヒリヒリするような気持ちを味わうこともない、低め安定のまま穏やかな日々を過ごせるほうがいいと考える人もいるでしょう。実際、私は心が穏やかな時があんまりない人間です。一つ何かを手に入れると、もっと幸福になりたいから、必ずまた別の何かが欲しくなる。

 引用:同上 189頁

常に飢餓感を感じて「欲しい、欲しい」と言っている人生を想像してみましたが、想像するだけで疲れてしまいました。そう、この本で描かれている「野心」を持って走り続ける人生が、私にはどうも幸せそうには見えないのです。それが、読後に違和感を持った理由かもしれません。

野心とは尽きないものかと思いきや、一方で林さんは、こんなこともおっしゃっています。

 夜景のきれいな高級マンションに暮らし、モデルと付き合ったり、女子アナとは合コンし放題、っていうのは、なかなか叶うことではないと思いますが、まずは、できるかぎり上を目指して努力する人生であってほしい。
 後で徐々に軌道修正をしていけばよいのです。そうすれば、気立ての優しい女性と結婚して、居心地の良いマンションで休日は可愛い子どもと遊ぶ、そんな幸福な人生が待っているはずです。

 引用:同上 8頁

「上を目指す」の「上」はモデルや女子アナなのか?など、突っ込みたいことが両手では足りないくらいあるのですがそれは別にして、「徐々に軌道修正」した先の「そんな幸福な人生」には、「野心」はもうないということなのでしょうか?それは林さんが言う「低め安定」で満足している人にはならないのでしょうか?

なにか矛盾している気がして、私にはよくわからないのです。

個人的には、若い内は「野心」を持ってがんばる、ある程度歳をとったら「野心」は卒業して穏やかに暮らす、というのがちょうど良いのかなと思います。

「穏やかに」と言ったって、生きていれば色々ありますし、常に穏やかでいられるわけではありません。そう考えると、穏やかさを求めるのもある意味「野心」なのかもしれませんね。

「野心のすすめ」のまとめと感想

「野心」について、なかなか腑に落ちないこともありましたが、「野心」を持つことの大事さは、自分と向き合うということにあるのだと思います。

自分がどんな人生を送りたいか。何をしたいのか。若いうちからそれをしっかり考えなさいというメッセージがこの本には込められています。

 

自分が何を欲しているかわからないまま、「こんなはずじゃなかった」と世の中を呪う寂しさほど惨めなことはありません。

 引用:同上 180頁

つまりは、こういう風にはならないように、ということなんですよね。

自分の人生についてしっかり考え、自分の人生に責任を持つ。そういう生き方ができれば良いなと思います。

 

 - 雑学・豆知識・その他

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